夢見がちで放浪癖

2次元と2.5次元間を息切れしながら反復横とびするオタクのひとりごとです。

「武道館」の最終回で泣いた話。

「武道館」の最終回を観終わりました。

武道館

武道館

ちなみに原作は未読でした。作者の朝井さんのこともあまり存じ上げないです、前に名古屋でたまたまサイン会をやってる所をお見かけしたくらい。

たまたま1話がやってるのを観て、それからなんとなく毎週観続けちゃったって感じです。
内容うんぬんよりJuice=Juiceのみんなが可愛くて。仕事でへとへとな私に可愛い女の子を観せてくれてありがとうフジテレビ!っていう笑。

そんな感じで最終回もなんとなく観てただけなんです。


それなのに事務所で夏目さんが語り出したあたりから涙が出てきてしまって。愛子ちゃんと碧ちゃんが武道館横のレストランみたいな所で話し出した時とか最後の愛子ちゃんの動画が出てきた時とかはもうボロボロに泣いてしまって。

私が好きなのは2次元アイドルと若手俳優なので3次元アイドルのファンの方とはもちろん色々な部分で違ってきます。それでもこの最終回は、2次元ドルオタの心にも訴えかける何かがありました…。


《 アイドルもファンも変化していく》

NEXT YOUに2期生を入れるか否かという場面での夏目さんの言葉です。


「変化するんだよ、人間は変わるんだ。

この子達の場合、本当に短い時間の中で急激に環境が変化する。普通の人が何年もかけて感じるような事を、ほんの数ヶ月で感じ取ってしまうんじゃないかな。

アイドルとして大きな期待や重圧を背負っているうちに、人間としての変化が訪れる。だから、グループが変化するのも当然だ。」


アイドル業界は常に変化しているイメージです。その流れを受け入れるファンもいれば受け入れられないファンもいる。アイドルに限らず好きなバンドなどでも「あの頃が1番良かった…」という経験、きっと誰でもあるはずです。

でも確かに夏目さんの言う通りなんですよね。彼女たちはアイドルである前に思春期真っ盛りの女の子なんです。普通に学校に通っているだけでも外見や内面が大きく変化してしまうこの時期に、アイドルとして沢山の仕事をこなしながら外からの刺激を受け続けていれば、デビュー当時と同じままでなんていれるわけがないんです。


さらに夏目さんは最後にこう言っています。

「いつか…ファンの方も変化するかもしれませんね。」

夏目さんはおそらく「アイドル=恋愛禁止」という現在の認識が変わる時が来るとすれば、それはアイドルファンの考え方自体が変化する時だと思っているのかもしれません。

ファンだってアイドルと同じように人間です。変化していってしまう生き物です。好きなアイドルをずっと長い間一途に応援している人もいれば、途中で他のアイドルファンに変わってしまう人、アイドルファンを辞めてしまう人、いろんな人がいます。そういった意味では、こちら側だけが変化していくアイドルに「昔はもっと…」と不満をもらすのは間違っているのかもしれませんね。私達だって変化しているのであれば、アイドルではなく、私達の見方が変わってしまったという可能性も有り得るわけですし。

アイドルもファンも変化していってしまう生き物。ずっと変わらず永遠に、なんていうことはアイドルにもファンにも、有り得ないことなのかもしれません。


《 碧が考える「正しい選択」》

「正しい選択ってこの世にあるのかな?」
武道館か恋か、愛子ちゃんと碧ちゃんは選択を迫られます。そんな時、碧ちゃんは愛子ちゃんにこう言いました。


「多分、正しかった選択しかないんだよ。何かを選んで、選び続けて、それを1個ずつ、正しかったものにしていくしかないんだよ。

だから私は、武道館には行けない。彼を選んだことを正しかった選択にしてみせる。」

碧ちゃんが格好良すぎて、でもどこか儚げですごく印象的なシーンでした。今までずっと「正しい選択」をしなければならない、間違った選択をしてはいけないと考え優等生であった碧ちゃんが、初めて自分自身の考えで動いたんですね。最後にヘアクリップを置いて去っていく所がまたなんとも…。

そして愛子ちゃんにとってもこの碧ちゃんの言葉は大きなキッカケになったに違いありません。武道館と大地くん、どちらを選ぶべきか迷い続けていた愛子ちゃん。しかもこの直前に大地くんは身を引くような発言をしていましたしね。愛子ちゃんは碧ちゃんの発言からどんなことを感じ取ったんでしょうか。

この言葉はアイドルに限らず本当に良い言葉だと思いました。誰だって生きていれば選択を迫られる時があると思うんです。その後その選択に満足する人と後悔する人、色んな人がいます。でも正しい選択を選ぶのではなく、自分の選択を正しかったと思えるように努力する。どの選択肢だって間違いではない、そう思えるようになれれば人生の苦しさって少し減らせるかもしれません。朝井さんすごい。


《 アイドルはいつまでアイドルなのか》

愛子ちゃんがアイドル卒業をファンに報告する動画には胸がギュッとなりました。


「小さい頃から歌って踊ることか大好きで、アイドルになりました。沢山の人の前で歌ったり踊ったりすることが出来たのは本っ当に楽しかった。

けど、だんだんしてはいけないことが増えてきて、誰かの頭の中の自分を生きているような…そんな気がしてきたんです。

それは…私のなりたい私じゃなかった

そんな風に悩んでた時、私のことを素直に好きって言ってくれる、その人の気持ちにだけに応えたいって思っちゃったんです。

ごめんなさい…

武道館は…私の夢でした。でも…そのステージに立つ前に…私は、アイドルではなくなってしまったみたいです。」


なんかわかんないですけどすごい泣けてしまって。この子好きな人と付き合いたいだけなのになんでこんな泣かないといけないんだろう、アイドルが恋愛することってそんなに悪いことなのかな?と改めて考えてしまいました。

確かに愛子ちゃんのしたことは他の人から見たら軽率ですし、この謝罪動画を観ても言い訳がましいと思う人もいるかもしれません。

ただ、愛子ちゃんの「夢」は「小さい頃の夢」のままだったのかなと

小さい頃って自分が好きな物、好きなことを仕事にしたいって思いますよね、ケーキ屋さんとかスポーツ選手とか。ただ大人になってくると、その夢で「どれだけ周りに影響を与えられるのか」を考えなければならないと昔読んだ「夢を叶えるゾウ」に書いてあった気がします。(うろ覚え)


夢をかなえるゾウ 文庫版

夢をかなえるゾウ 文庫版


愛子ちゃんは歌って踊ることが大好きで、だからアイドルになりました。ただNEXT YOUが人気を集めるようになるにつれ、愛子ちゃんは自分の夢が周りにどんな影響を与えるのか、自分の行動1つ1つが周りにどんな影響を与えるのかを考え始めなければいけなかったのかもしれません。

でもきっと、愛子ちゃんはそれが苦しかったんだと思います。もし愛子ちゃんが大地くんではなく武道館を目指すことを選び、このままアイドルを続けていれば、周りの頭の中の愛子ちゃんを演じ続けなければなりません。

るりかちゃんやはなさまのように、それを夢のためだと思える子もいます。彼女達は「小さい頃の夢」を「大人になってからの夢」に上手く落とし込めた子たちだと思います。でも愛子ちゃんにはそれが出来なかった。ただそれだけだと思います。


最後のセリフが特に印象的です。

「ステージに立つ前に私はアイドルではなくなってしまった」
アイドルがアイドルでなくなってしまうのは一体いつからなんでしょうか?そう思わざるを得ないセリフです。

もしかしたら愛子ちゃんのように小さい頃からアイドルになるのが夢で、しかしアイドルになれた後、年齢を重ねる毎に見えない所で心の葛藤をしているアイドルの子って結構いるのかもしれません。恋愛だってしたいと思うんです。変装せずに買い物や旅行だってしたいだろうし、勝手に自分のイメージを決めつける人に怒りたいとも思うんです。


武道館のラストの未来では、「アイドル=恋愛禁止」という認識はどうやらなくなっているようです。アイドルだって恋愛する、それをファンだって容認してくれている。もし1期生ではなく13期生として愛子ちゃんがNEXT YOUに入っていれば、また違った人生になっていたかもしれません。でも人間は変化するものですから20期生とかの時代になったらまた恋愛禁止になっているかもしれませんし。


この作品は「なんでアイドルは恋愛しちゃいけないの?そもそもアイドルって何なの?」という基本的な所をよく考えさせてくれました。朝井さんってアイドルオタなんですかね?アイドル詳しくないと書けないよなぁと思う所がチラホラあったので…。原作が読みたくなってきました。